房総・鹿島エリアへのE131系投入

今までの経緯と、E131系による北総・房総各線の置き換え。

E131系による北総・房総各線の置き換えについて

E131系の外観(公式プレスリリース) E131系の外観(公式プレスリリース)。
2015年以降、置き換え計画に関する情報が労組資料から明らかになっています。

E131系が明らかになるまでの経緯

内房線、外房線、鹿島線のワンマン化が初めて外部に出たのは、2015年9月の労組資料です。千葉支社が「房総南線や鹿島線でワンマン運転の導入」を計画しているとの記述がありました。2018年5月には「2020年(度)までに、内房線・君津以南、外房線・上総一ノ宮以南、鹿島線のワンマン化」が行われるとされ、具体的な時期、区間が明らかとなりました。
2019年3月、同じ労組から「幕張車両センターにも、モニタリング装置の付いた2両編成が配置される」と編成両数と配置区所の情報が明らかとなり、2020年1月には「(E)131系」という形式名が明らかとなりました。2020年3月に正式な組合提案があり、2021年春から営業に就くことが明らかになり、仕様と投入形態が一部明らかになっています。
そして、2020年5月12日、公式プレスリリース(PDF)が公開され、外観に加えて、更に詳しい仕様が明らかとなりました。

E131系の仕様について

2020年3月の資料によると、E131系の車内配置図は下記の通りです。車両は前面貫通型・衝撃吸収構造の4扉車で、ボックスシートが1編成に4か所設置され、残りはロングシートとなります。トイレやフリースペースも設置されます。
E131系の車内配置図 公式プレスリリースによると、モニタリング技術を活用した車両搭載機器の状態監視機能に加え、一部編成に線路モニタリング装置が搭載されます。また、客室について「一部のドア上部に案内表示画面(17インチ)を設置」したとの記述、「主回路機器にSiC半導体素子を採用」したとの記述、モニタ装置として「MON」との表記があります。
2020年5月、J-TREC新津事業所で現車が確認され、編成はクモハE131形、クハE130形による2連となることが明らかとなりました(詳細)。カラー帯の青系はプレスリリースでは青緑色のように見えましたが、実車はかなり明るい水色で印象が異なります。また、ホームドア付の線区で運用されている車両のように、Dコック表記が窓上にも表記されていました。
短編成のモニタ装置は従来からMONとされ、仕様が推測困難ですが、伝送系にEthernetを使うなどE235系に併せた仕様が見込まれます。

房総各線への投入形態について

2020年3月の資料によると、投入時期は2020年度の第2四半期から第4四半期で、2020年5月に確認された現車の検査表記からも、2020年7月に1編成目が公式試運転を行う見込みです。
ダイヤについて「朝夕の通勤時間帯は(ワンマン化を)行わない。ダイヤはこれから検討し、現在の運転本数は維持したい。新車両は原則、千葉に上ってこない。系統分離になる」との会社側発言が同じ資料に掲載されています。
公式プレスリリースによると、投入数は2連12本で、209系の完全な置き換えではなく、末端部分への少数の投入となります。
3か月というスパン(機能保全・A保全の周期)で車両を維持するうえで、仕業検査、清掃、トイレ関係の要員・設備が必要ですが、「原則、千葉に上ってこない」という表現からは、幕張へ戻る頻度が不明です。
房総各線では、幕張車両センター鴨川派出、一ノ宮派出で仕業検査を行っていますが、電化されたトイレ関係の設備が無いことから、設備や車両の改良か、数日毎の幕張返却が必要となります。
鹿島線の場合は、沿線に検修要員がおらず、一定の返却回送が発生すると推測されます。

今後のE131系投入線区について(参考)

205系、209系、211系が残存し、かつ近郊タイプの転用では置換えにくい線区へ投入されることになるでしょう。

E235系とE131系の違い

JR東日本では輸送品質の目標値(Git数・小さいほど輸送障害の影響が少ない)を定めており、車両には故障発生率の目標値(Fit数・小さいほど故障が少ない)を定めています。例えば、京浜東北線209系なら約9万Fit(文献1)、京葉線E233系なら約4千Fit(文献2)です。
E235系は稠密線区向けの車両で、各機器をINTEROSに対応させ、コストをかけて機器の多重化を進めることで、1両あたりのFit数を大幅に抑えた(故障頻度を抑えた)車両です。 一方で、閑散線区は、同じ輸送品質でも運行密度が低く、編成両数が少ない(つまり、故障する機会がそもそも少ない)ため、1両あたりのFit数が大きくてもGit数を抑えることができます。同一形式だと、閑散線区のほうが稠密線区より輸送品質が上がってしまう逆転現象が起きます。
これを是正する(稠密線区に見合った投資をする)ためには、閑散線区向けの考え方が必要となり、同じ4連でも稠密線区はE235系、閑散線区はE131系という棲み分けが今後発生するでしょう。

投入の可能性がある線区

線区2020年度編成数コメント
鶴見・南武支線205系2連3本・3連9本燃料電池車FV-E991系を試験導入。
架線レスの可能性も。
相模線205系4連13本情報なし。トイレ不要。→2021年度投入発表
宇都宮・日光線205系4連12本E531系の絡みも出てくる線区。→2021年度投入発表
房総各線末端区間209系6連26本・4連42本導入予定。
房総各線千葉近郊労組資料で転入計画が明らか。
補助的に導入されるか否か。
信越・篠ノ井・中央線211系6連14本・3連36本
上越・両毛・吾妻線211系6連7本・4連23本
仙石線205系4連17本

参考文献

  • (文献1)松本:鉄道システムにおける信頼性と安全性、日本信頼性学会誌 Vol.29, No.3、2007年
  • (文献2)浦田:車両故障防止の新思想 Fit数理論の検証、日本鉄道技術協会誌 Vol.58, No.10、2015年
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