量産車置き換え計画

新系列の更新スタンス

「重量半分・価格半分・コスト半分」という有名なフレーズがあります。これは209系開発時のスタンスで、当時の山之内氏によるものです。運転協会誌2004年7月号から引用すると、

重量半分:編成としての総重量の半減
価格半分:一定数量発注時の価格を半減
寿命半分:車両の耐用年数13年間のメンテナンスフリー化

このようになっています。ただし、重量が半分の車両を作る事など不可能なので、これは目標として示したものでしょう。
よく「耐用年数」が誤解されますが、これは減価償却を考える上での法律上の耐用年数で、鉄道車両がたまたま13年(201系とかも含めて)だったということです。もちろん車体寿命を13年に設定した強度設計は不可能ですね。
新系列は「13年で置き換えても経営を圧迫させない車両」とされており、13年間メンテナンスフリー(正確には、解体するものは7年、解体しないものは13年)で走れて、新造13年後に更新か廃車を選択できるようになっています。実車の209系0番台では、京浜東北線向け初期車は廃車、南武線向けは更新が選択されました。
現実的に考えれば、1回だけ大規模な検査をして26年持たせると考えるのが普通で、13年での廃車を想定して車体を新造しているわけではありません。

着々と進んでいた車体保全計画

209系は13年間のメンテナンスフリーを目指しましたが、結果的には床下配管の一部と胴受の寿命は13年持たず、2004年ごろから交換されています。ドア故障は床下配管、加減速時の金属音は胴受の劣化が原因であり、車体保全工事を待たずに交換工事が始まりました。
本来、209系以降の系列は、制御系の電子部品の寿命が13年ほどとされており、2006年ごろには209系の足回りも寿命が迫ってきました。初の車体保全に向けて綿密な計画が組まれました。
東京総合車両センターでは、検査時にデジタル無線を追設し、下十条運転区では側窓の開閉化改造を施工、さらに運番表示機もLED化され、車体保全工事中の予備車として、ミツ515編成の借り入れも行われました。車体保全工事は急ピッチで行われる予定になっていて、本来は新系列を担当しない大宮総合車両センターでも施工予定でした。これは、209系以降もE217系などの更新が続き、3年ほどで更新を終えないと間に合わなくなるからです。

計画のまとめ

  • 209系0番台(10連78本)車体保全工事施工。
  • 209系900番台(10連3本)廃車。一部訓練機械に。

突然の廃車計画

2005年当時、尼崎事故の影響で、鉄道会社に対するマスメディアの目が厳しいものになっていました。些細なオーバーランが連日のように報道され、車体構造にまでケチをつける評論家も登場しました。
そんななか、JR東日本では立て続けに209系の故障が発生、更には乗客が閉じ込められた車内で体調を崩したりし、その度に安全性と関連付けた報道が行われました。2005年12月、209系を含めた窓開口面積が小さめの車両の窓開閉化工事が発表されました。ところが、2006年になっても車体保全工事は行われず、ミツ515編成は返却、デジタル無線設置は2006年6月ごろに中止され、雲行きが怪しくなってきました。
2006年9月、定例社長会見でE233系の投入が正式発表され、同時に交通新聞に「209系は、500番台を除き全車廃車」との記事が載りました。信頼性向上を図ったE233系により、輸送障害を減らす―――この記述が209系0番台廃車計画の根本的理由だったのではと思います。この判断は、おそらく2006年上半期に行われたのでは無いでしょうか。
とりあえず2007年度から、手を入れていない初期車の廃車が進みました。置き換えが長期にわたるため、途中での計画変更の可能性も考慮していたようです。

計画のまとめ

  • E233系(10連83本)新製投入。
  • 209系0番台(10連78本)廃車。一部訓練機械に。
  • 209系900番台(10連3本)廃車。
  • 209系500番台(10連5本)京葉線転属。

一転して転用計画浮上

209系の本格廃車が始まってすぐ、先頭車の一部が解体を免れて保管され始めました。最大で22両もの先頭車が長野総合車両センターで留置されていた事になります。
これらは2008年度以降の209系転用計画で使われる車両で、編成短縮に伴って不足する先頭車を補うためのものです。
2008年度から始まる転用計画では、300両程度が房総各線へ転用され、その他にも南武線に数本が転用される模様です。転用車は大元の計画通り車体保全工事を、さらに転用先の線区に合わせた改造も受けるようです。全部で3年がかりの転用になります。

計画のまとめ

  • E233系(10連83本)新製投入。
  • 209系0番台(6連3本)南武線転属。
  • 209系0番台(6連26本)房総各線転属。
  • 209系0番台(4連42本)房総各線転属。
  • 209系0番台(余剰車)廃車。
  • 209系900番台(10連3本)廃車。
  • 209系500番台(10連5本)京葉線転属。
その後、209系500番台のうち1本は、中央総武緩行線へ転属先が変更されました。
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