日本鉄道技術協会の協会誌「JREA」2022年12月号によると、西武鉄道が新造車両と並行して「サステナ車両」を導入することによって2030年度までに全所有車両のVVVF化を目指していることが明らかになりました。
これは、西武鉄道の鉄道本部長が同誌に寄稿した記事から明らかになったもので、同社の各技術部門における固定費削減に向けた取り組みが紹介されています。この中で、車両部門における取り組みの一つとしてサステナ車両施策の検討経緯について触れられています。
記事によれば、同業他社局と比較して車両のVVVF化が遅れているとしたうえで、従来は非VVVF車を新造車両に更新することで車両のVVVF化を目指しており、この場合2036年度までかかる見込みであったとしています。
しかし、社会的な環境負荷軽減活動の高まりに応える意味で、二酸化炭素排出量削減を加速させるための検討を行ったとあります。検討の結果、同業他社局ではすでにVVVF車の廃車が発生していることを踏まえ、車両更新計画の一部を他社局からの譲受車両(サステナ車両)とすることで2030年度までにVVVF化完了を目指すことになり、今後は計画の実現に向け関係者との調整・協議を進めるとしています。
今後記事通りに計画が進む場合、当初の見込みより6年前倒しで所属車両のVVVF化が達成されることになります。
現有の西武鉄道所属車両で非VVVF車は101系・2000系・4000系・10000系(一部除く)の4形式で、2022年12月5日現在の上記各形式の所属車両数は
101系:28両(4両・7本)
2000系:290両(2両・13本、4両・19本、6両・6本、8両・19本)
4000系:48両(4両・12本、「52席の至福」含む)
10000系:35両(7両・5本、内1本はVVVF車でありその編成を除外すると7両・4本)
の、計401両(10000系は5本で計算)です。
ここ数年、西武鉄道では一般車両に限れば年20~30両程度の新車導入が続いていたほか、2022年度は車両保有数削減分40両と合算して70両が置き換え見込みであることが明らかになっており、2022年度これまでに2000系38両で廃車とみられる動きがありました(上記数字にこの38両は含んでいません)。
以上のことから、今後も車両更新のペースが加速することが予測されます。
なお、この記事では他にも、
・変電所間に敷設しているケーブルをメタルケーブルから光ケーブルに変更し、遠隔で取得できる変電機器データを多様化することで現場巡視作業軽減を狙う
・レール探傷車更新に合わせてレールの波状摩耗測定等を行う測定装置を搭載(2021年度に検証を行い、2022年度から運用開始)
・車輪交換費用やレールへの影響低減を図るため、本線を走行する車両へ車載塗油器設置を検討
と、電気・工務・車両の各技術部門における取り組み状況が紹介されています。
▼参考文献
藤井:「鉄道施設・電気設備の固定費削減」, JREA 65(12):2022.12, p.46548-46549
※サステナ車両:“無塗装車体、VVVFインバーター制御車両等の他社からの譲受車両”と西武が独自に定義した呼称
(「2022年3月期 決算実績概況および「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)」の進捗」45、47ページ(PDF)より)